はじめに
2019年にJavaScriptのアラートループへのリンクを掲示板に記載しただけで兵庫県警から家宅捜索を受けたアラートループ事件が起き、セキュリティ関係者やITエンジニアを中心に警察の捜査に大きな疑問の声が湧き起こりました。同じくCoinhive事件ではJavaScriptのマイニングツールをWebサイトに貼っただけで起訴されました。いったい今、日本では何が起こっているのでしょうか。その始まりの事件としてのWizard Bible事件があったこと、Wizard Bible事件とはどのような事件であったのかを記載していきます。
1 不正指令電磁的記録に関する罪とは何か
齊藤貴義
Wizard Bible事件、Coinhive事件、アラートループ事件で問われた不正指令電磁的記録に関する罪とは何であったのかを検証していきます。条文がどのような内容になっているのか、成立要件は何か、この罪が刑法に規定された経緯はどの歴史過程であったのかを辿っていきます。不正指令電磁的記録に関する罪の統計データや資料も掲載していきます。
2 Wizard Bible事件ロングインタビュー
齊藤貴義
Wizard Bible事件で家宅捜索を受けて略式起訴されたIPUSIRONさんへのロングインタビューを行い事件の全貌を明らかにしていきます。Wizard Bibleとはどのような媒体で、どのような情報を掲載していたのか。なぜ警察から家宅捜索を受けたのか。警察の取り調べではどのようなことが聞かれたのか。検察から起訴されるまでにどのようなやり取りがあったのか。その後の反響なども含め本人にインタビューします。本章の内容は同人誌『Webセキュリティのミライ』より大幅に加筆予定です。
3 Wizard Bible事件に対する反応
齊藤貴義
Wizard Bible事件に対してネット界隈やマスメディア、専門家や政治家はどのような反応を示したのかを辿っていきます。またWizard Bible事件について人々がどのように考えたのかアンケートを実施します。そのアンケート結果から考察していきます。
4 Coinhive事件
齊藤貴義
Coinhive事件とはどのような事件であったのかについて扱います。Coinhiveとはどのようなツールで何が問題となったのか、事件の詳細を検証していきます。取材を通じてCoinhive事件で問われたものに迫ります。
5 アラートループ事件
齊藤貴義
アラートループ事件とはどのような事件であったのか、事件の詳細を検証していきます。アラートループがどのような技術であるのか、事件の詳細、反響などを検証していきます。取材を通じてアラートループ事件で問われたものに迫ります。
6 サイバー犯罪関連法の考察
齊藤貴義
サイバー犯罪と法律との関係を考察していきます。サイバー犯罪関連法にはどのような法律があるのかを解説します。サイバー犯罪と検挙数の統計データを検証します。世界各国のサイバー犯罪関連法との比較も行っていきます。セキュリティ専門家やセキュリティ団体にサイバー犯罪規制法への見解を取材します。ITやサイバー犯罪に詳しい弁護士や政治家、警察庁・検察庁へも取材する予定です。
前章までは、一連の事件の概要、その関連性について解説してきました。本章では、これまでの解説の集大成として、自衛するための具体的かつ技術的な方法について解説します。
解説するに当たってセキュリティ会社やエンジニアたちが運用している環境を調査しました。対象者をセキュリティエンジニア、セキュリティ初学者、ITエンジニア、一般のインターネットユーザーに分けており、自分に合ったアプローチを選択できます。
本章の特筆すべき点は「事件に巻き込まれないための自衛策」に終始せず、「万が一巻き込まれてしまった場合の対応策」まで解説していることです。Wizard Bible事件の当事者が考察した内容であり、実践的なアプローチになっています。
巻末にWizard Bible事件・Coinhive事件・アラートループ事件など不正指令電磁的記録罪に関する年表および資料を掲載します。時系列でどのような事件が起きたのかを辿れます。サイバーセキュリティ関連法や一次資料なども掲載していきます。